KNOW THE SCORE
訳もわからず"Three Lions on your shirt"のファッション・ヴィクティムも、『時計じかけのオレンジ』のコスプレをして、旭日旗や日章旗ではなく聖ジョージ・クロスを壁に掲げて(売国奴かよ)、Manchester Unitedがどうのこうのと歌っているミーちゃんハーちゃんも、最低でも、これらの本を読んだことが無ければ"Poseur Blunder"になりますわな(笑)。"KNOW THE SCORE"というのは、「身の程を知れよ」という意味なんだよね。偉大なる日本産(?)Footy Punkの創始者、射延兄弟に敬意を表して・・・
"POSEUR BLUNDER" by The Griffin
Watching the Sky with pals of mine
Eating chips, Dick finishes off two pints
Have our laugh an' have our say
Stay up to see the Match Of The DayGunners one-Hammers nil
Still watch the game in at the kill
We lost the game, we lost the cup
But even still we'll never tapAre the poseurs following game at all
Never seen the skills of Joe Cole
Wear the present kit on the stage
Acting like thugs but never the rageDon't mean a thing
Poseurs are gonna blunder
They don't care about the scoreScarves, jerseys, and sweat tops
Be easy to buy in a punk shop
You take whatever you can
But you're just superficial fansWhen they find a fashion punk
They'll all say 'You daft cunt!'
Tell me, where's yer creed
You're nothing that we needThree Lions on your shirt
Take a picture at Upton Park
Even on the sleeves, on the zine
But they're just poseurs don't mean a thingDon't mean a thing
Poseur are gonna blunder
They don't care about the scoreThree Lions on your shirt
Take a picture at Upton Park
Even on the sleeves, on the zine
But they're just poseurs don't mean a thing
(2005年2月某日)
『イングランド 母なる国のフットボール』
東本貢司 (著)
(日本放送出版協会)
The GriffinやLRFの歌詞を読んで、イングランドのフットボールに興味を持った人にとっては恰好の入門書ですね。といっても、幸か不幸か、イングランドのフットボールについて専門的に語れる人が我が国において、この東本貢司しかいないという(苦笑)。いわば独占禁止法にでも引っかかるのではないかと思われるほど、この世界では、この人が幅を利かせています。しかも、文章にクセがあって、ナルシストだからタチが悪いんだよね(笑)。それだけに、この人に対する世間の風当たりは強いです。例えば、「某数字ちゃんねる」などを見ると叩かれていて、この人を擁護する意見は稀で、「実況の下手な、経歴の怪しい、サッカー経験の無い単なる蘊蓄野郎」としか思われていません。
確かに、著者が高校時代に4年間留学していたという「パブリック・スクール」は、良家の子息が寮生活をしながら通う学校で、今はどうか知らないが、「フットボール」は労働者階級のもの、上流階級は「ラグビー」と昔から相場が決まっていたイングランドにおいて、著者にサッカー経験がないというのは無理も無いことなんですよ(だから、「パブリック・スクール」に留学したことがあるという肩書きは、フットボール・ジャーナリストとしては、ある意味、マイナス要因でもある訳だ)。さらに、この著者の場合、もともと新聞記者だったわけでもなく、他業種のサラリーマンから、その蘊蓄だけで、いきなりジャーナリストになったことで皆の反感を買っているのでしょう。
行き当たりばったりで書いているせいか(?)話題があちこちに飛んでいて、しかも、文章の書き方に独特なクセがあって総括しづらいのですが、後に出版された著者の『フットボールと英語のはなし Saturday in the Park』と全く同じ内容がニ三、この本に書かれているのは、この本でネタを全部出尽くしてしまったことを表しているのか、「あとがき、もしくは謝辞」に書かれていたこととは裏腹に、同書が如何に粗悪な便乗商法であったかを物語っています。
第6章「フェアプレーの中身」は面白かった。文化の違いというか、狩猟民族の強さがわかった。しかし、如何にフットボールのルールが曖昧かを表しているよね。「繰り返すが、ルールを取り締まるレフリーは、元より生身の人間、そのときの精神状態にも左右されつつ、判断基準が一定しないものである。そして、それでいいと思う」って、ちょっと待ってくれ。そんなのミスター高橋と言ってることが一緒じゃないですか(笑)。そういう見地から言うと、『アーロン収容所』 会田雄次(著)を引き合いに出すまでも無く、イングランド人の潜在意識の中には人種的優越感があるから、日本人選手なんて、イングランドのリーグでプレーする場合は不利なんじゃないのかな。
第8章「アイドルネームの意義」においては、なぜアーセナルが「ガナーズ」と呼ばれるのか、リヴァプールが「レッズ」でチェルシーが「ブルーズ」といったような、ファンが日頃当たり前のように使っている、それぞれのクラブ・ニックネームについて解説しています。「クラブ名→アイドルネーム→その意味(裏の意味)」の一覧は、初心者にとっては大変参考になります。
イングランドのフットボールの歴史やリーグ構成の説明など、残りの事務的な話は、『ロングパス サッカー誕生から英国プレミアリーグまで』 林信吾 (著)と内容が重複しています。ただ、あの本と大きく異なる点は、俺は通だぞと言わんばかりに、著者お得意の横文字だらけの蘊蓄披露が、これでもかと続き、最終的には、初心者にとっては何が書いてあるのか、さっぱりわからないところでしょう。
『サッカー株式会社』
クレイグ・マクギル (著), 田辺雅之 (翻訳)
(文芸春秋)
本来、庶民の手の届く場所にあったサッカーが、行き過ぎた商業化に伴い金儲けの道具と化しファンを蔑ろにしている、という現状に警鐘を鳴らした本です。エエカッコしいの東本貢司の著書だけでは決して窺い知ることのできないヨーロッパ・サッカー界の腐敗や堕落を、スコットランド人のジャーナリストが包み隠さず書いています。恐らく、サッカーに関する翻訳本が圧倒的に少ない我が国において、日本人のほとんどが、この本をネタ元としてサッカー本を書いていると思われます。
立見席の廃止によるチケット高騰化とそれに伴うファン層の変化(下層階級から上流階級へ)、ゲイ選手への差別、審判買収、高騰する選手の年俸、テレビ放映権問題、ヨーロッパ・サッカー界の分裂、ワールドカップ開催地決定をめぐる政治的対立、EUと移籍制度の問題、フーリガン、人種差別、スコットランドの宗教代理戦争、ヒルズボローの悲劇、ファンとクラブの対立・・・と問題は山積みな訳なのですが、ここまで詳細に書けるサッカー文化の成熟度合、真の「言論の自由」があるイギリスの、いやヨーロッパのジャーナリズムが羨ましいと思った。
逆に、我が国のプロ野球に当てはめて考えてみると、球団は企業の広告塔に過ぎず地域に利益を還元することを知らない。プロ野球界は独裁者みたいな新聞社の爺さんが金に物を言わせて、いい選手を掻き集めてきて、個人的な趣味で牛耳っている。それについて誰も物が言えない。EUならぬメジャー・リーグはおろか、日本人だけの狭い日本国内だけの問題で、スケールが話にならないくらい小さすぎる。テレビ放映権は読売巨人軍が独占しているから類似した問題ではあるとしても、アジア・リーグなるものがあるならともかく、「人種差別」などの問題は多民族国家でない日本では有り得ない。Jリーグは歴史が浅すぎて言うに及ばずですね。
それはともかく、ヨーロッパのサッカー界にも「アメリカ型資本主義」の波が押し寄せてきている、何事も富の一極集中は良くない、サッカーを政治や宗教の代理戦争にしてはいけない、お金を払ってくれるファンあってのエンターテインメントだということを再認識させられる本でした。
『Sports Graphic Number PLUS March 2003 イギリスを極める。Rock with Football』
ナンバー編集部 (編さん)
Sports Graphic Numberの、カラー写真を多用したイギリスのフットボール特集号です。執筆者の中には、東本貢司氏は勿論のこと(失笑)、何と林信吾氏も、高田延彦の自伝、『泣き虫』の著者でもある金子達仁氏もいます(彼は、これが本業か)。ジョージ・ベスト、稲本潤一、マイケル・オーウェンなどへのインタビュー、そして何故かユリ・ゲラーまでもが、ディビジョン3にいる某チームの共同チェアマンとしてインタビューに答えています(笑)。「階級ごとに読む新聞が分かれているって本当!?」という面白いコラムもあります。
"Rock with Football"という副題の通り、ページの左片隅にブリティッシュ・ロックの名盤とされるアルバムの寸評が、それぞれのコラムごとに載っています(といっても、ほとんどビートルズですけどね)。しかし、無理やりビートルズとフットボールを結びつけようとするあたりに、編集者の意図というか、あざとさを感じるんだよな。それだったら『ロッキングオン』あたりの専門誌から人を引っ張ってきて、ブリティッシュ・ロックとフットボールの関係性について、もうちょっと核心的な話をしてもらうとか、して欲しかったんだけどさ。そういう専門分野を越えた人選というか横の繋がりは多分無いんだろうな。まあ、日本に真っ当な音楽ジャーナリズムが存在しないこと自体が一番の原因なんだろうけどさ(苦笑)。
東本貢司氏は、えげつないです(笑)。"Beckham for Sale"と題して、ベッカムの商品価値について書いてるんだけど、それに関連して、自分が訳しているとは言わずに、さりげなく自分の翻訳本を宣伝しています。ある意味、自分に対しての提灯記事、自作自演だよな、これは(笑)。
林信吾氏は自身の著作の中で、ブリティッシュ・ロックには全く興味が無く、ロンドンで暮らしていた間もコンサートに行ったことすらないと告白しているにもかかわらず、"Punks & Hooligans"と題して、通り一遍の知識だけで、それらについて無理やり語っています(笑)。ここは、やはり射延博樹氏に任せるべきでしたね。でも彼が担当するとCockney RejectsとWest Ham Unitedを引き合いに出して、またいつもの湿っぽい話が始まるから、やめたほうがいいか(苦笑)。
金子達仁氏は"Walk around on The Scotland's Malt Whisky Trail"と題して、サッカー・ジャーナリストでありながら、何故かスコットランドへ行き、美味しいウイスキーを飲んで帰ってきただけという(笑)、意味不明な役回りです。
「カメラマン・ヤマダのプレミアガイド」では、プレミアリーグのチームと選手のデータが載っているんだけど、この本が刊行されたのが2003年3月であり、ベッカムがManchester Unitedの選手として登録されているなど、さすがに時の流れには逆らえません。しかし、Aston VillaとWest Ham Unitedのユニフォームは、どういう訳か全く同じ色ですね(笑)。最初に見たとき、写真の誤植かと思いました。
マンチェスターとリバプールの街ガイドは、実際に行ったことのある私が言うのも何だが、マンチェスターは、はっきり言って、街の中心部は科学産業博物館以外に見るものが無い。あとは買い物だけです。リバプールは、さすがビートルズの街だけあって、中心部にはマシュー・ストリートはあるは、海側には入場料が馬鹿高い割には見るものがないビートルズ・ストーリー(民間経営のビートルズ博物館)と海洋博物館、駅の近くにはイギリス国内としては遅い時間の夜の7:30まで開館している古い大きな図書館と、その隣には博物館、丘を上ると映画に出てきそうな大聖堂、とてもじゃないが二日三日で周れるところではありません。なお、マンチェスターとリバプールは共にチャイナ・タウンがあるが、横浜にあるような中華街を想定していくと肩透かしを食らいます。寂びれた通りが一本、あるいは寂びれた一角があって、中華料理屋が軒を連ねているだけです。日本国内と違い、あそこの中国人たちは商魂逞しくなく、ひっそりと暮らしているんですね。
『FOOTBALL ENGLISH サッカーを愛するあなたに捧げる用語と写真』
石島道康 (著), マイケル・プラストウ (著)
(南雲堂フェニックス)
東本貢司氏が『フットボールと英語のはなし Saturday in the Park』で、皆の期待を見事に裏切って、成し遂げることができなかったことを、既にこの本がやってしまっていたんですね(苦笑)。Football Englishの用語や独特な言い回しの解説集です。The GriffinやLRFのように、Footballを題材にして英語の歌詞を書くようなバンドにとっては、参考書として、ぜひ手元に持っておくべき本です。
まず、ページを捲って中身を見て、中学の英語教科書かと見紛う、安っぽいレイアウトに面食らってしまいました(笑)。しかも、掲載されている写真を見ると、日本代表のKit/Strip/Team Coloursを着たAce/Star Playerの北澤やカズ、井原、ラモス、オフトManager、ゴン中山に都並と、滅茶苦茶古いStarting line-upじゃないですか(笑)。それもそのはず、この本の初版1刷が「1993年5月1日」なんですね。Japan Professional Football League黎明期、ドーハの悲劇の頃ですか。「あそこで北澤がゲットするとは思わなかったよ・・・」で始まる、The Griffin "Sunday Morning Ball Game"の頃ですね(失笑)。例えば、
日本で使われているsoccerという呼び名は間違いではないのですが、イギリスやフランスではfootball, ドイツではfussball, スペイン、ブラジルではfutbolと呼ばれ、スペルの違いはありますが、世界の多くの国々でフットボールが基本として使われています・・・
一般にユニフォームと呼ばれているものは、フットボールではkitやstripといいます。これらはshirtやshorts, socksも含んだ総称となって使われます・・・
フットボール・シューズのことをbootsといいます。ブーツというと長靴をイメージしそうですが、決してスパイクとはいいません・・・
試合中にプレーを中断してケガなどの治療に費し、審判が時計を止めた時間をinjury time(インジュリー・タイム)、またはtime added on(タイム・アディド・オン)と呼んで規定の時間の後に延長しています。・・・
Note : 日本で広く使われているロス・タイムは和製英語です。などの、目から鱗が落ちるであろう英語表現が満載です。日頃、我々が使っている和製英語が如何に通用しないかを思い知らされます。しかし、時には天然ボケの面白い個所があって、
・・・キャラクターグッズなどを売っている所はsupporters' shopとか書かれていていますので、お金を払って持っていってください。
これ、日本語として変だし、意味通らないよな(笑)。陣内智則のひとりコントのネタで使えそうですね(笑)。他にも、
・・・ハーフタイムなどに控えの選手たちがグランドに出てやっているのも、このノックアバウト・ゲームで、決してふざけあっているのではなく、交代に備えてのウォーミング・アップなのです。なかにはふざけている選手もいるように見えますが・・・。
・・・よくチーム写真などに一緒に写っている少年がこのマスコットなのですが、南米での試合などでは、いつの間にかファンが入り込んでマスコットのふりをすることが時たま見られています。もちろん、その少年が警備員に連れて行かれることはいうまでもありません。・・・
全編、血が通っていない翻訳調の文体で書かれている文章を読んでいて、突然こんな表現にぶち当たると思わず笑っちゃいますね。シュールやなあ(笑)。なお、この本には、Refereeに対する、えげつない罵倒文句だとか、下品なFootball Chantの類は全く載っておりません(笑)。エンターテインメントとして評価した場合、至極退屈な本です。この本は、英国人特有の皮肉・ユーモアが無く、写真を日本代表Squadに限定してしまったところが失敗だったな。
Note: 赤い太字で書いた語句は、すべて用語として、この本に掲載されていたものです。
『フットボールと英語のはなし Saturday in the Park』
東本貢司 (著)
(三省堂)
Englandの「フットボール」と「英語」にこだわる、某Footy兄弟が見たら飛び上がって喜びそうな表題ですね(失笑)。しかし、その期待は見事に裏切られます(苦笑)。実際、英字新聞を毎日読んでいる英語上級者の私ですら、その表題に釣られてワクワクしながら読んでみたのですが、首を傾げるような内容の本でした。
思えば、『フーリファン 傷だらけの30年』の翻訳文でも、その片鱗をうかがわせていたんだが、この東本貢司という人が書く文章というのは、くどくて難解で、少し格好つけすぎじゃないのかね? この本の著者は、自分が日本人であるにもかかわらず、そこから飛躍して、当の英国人でもない、どこの国の人間でもありえない立場から日本の有り様について指摘するという、福田和也先生が言うところの「国際派エセ左翼」です。日本がFootball後進国で発祥地のEnglandに見習うべきところが沢山あるのは仕方がないとしても、書いてある内容と言えば、イギリス英語を日本国の公用語にせよと言わんばかりの愚痴で、これじゃ西洋コンプレックス丸出し、「英国を殊更に素晴らしい国に仕立て上げ、日本を卑下する」という手法の、林望・マークス寿子・井形慶子らの手合いが挙って世に出している馬鹿「英国礼賛・日本批判」本と、やってることが同じではないかと思うのですが。
英国人は、アメリカ人の喋る英語を"Cowboy English"だとか「田舎者の英語」だとか言って馬鹿にする嫌いがあるが(その逆は、あまり聞いたことがない)、別に我々日本人が学校で習ってきたアメリカ英語を、わざわざイギリス英語に直す必要は無いんじゃないかと思います。皮肉なことに、英国人やオーストラリア人が日本の(インチキ)英会話スクールで指導する際に、アメリカ英語で苦労しているという話を聞くし。日本はアメリカの植民地みたいなものだから、日本人が使う英語がアメリカ英語なのは当然なんですよ。グローバリズムで、今やアメリカが世界の中心にいるわけだし、自ずとアメリカ英語が主流になってくるでしょう。まあ、この辺の事はBill Leckie氏に、ぜひ聞いてみたいところですけどね(失笑)。
恐らく、「フットボール」「英語」ともに、初心者にとっては敷居が高すぎて書いてあることが理解できない、上級者にとっては取り立てて凄い発見もなく物足りなさを感じるという、「帯に短し襷に長し」の本だと思います(まあ、この本の著者は、大した語学力・洞察力があるようには見えないのですが)。三省堂というと、重い辞典を学校へ持って行くのが億劫な、勉強嫌いな学生ならば誰しもが持っている小型の英和辞典、「コンサイス英和辞典」の会社として有名ですが、この本は英語の実用書にもなっていないんじゃないかと思います。アマゾンのカスタマー・レビューを見ても、あまり評価は芳しくないし。ぶっちゃけ、この本、売れていないんじゃないのかね? 「あとがき、もしくは謝辞」の中で書かれていることが嘘になっちゃうよな(失笑)。
『ぼくのプレミア・ライフ』 新潮文庫
ニック・ホーンビィ (著), 森田義信 (翻訳)
(新潮社)
『フーリガン 最悪の自叙伝』や『フーリファン 傷だらけの30年』が、武闘派の暴力大将が書いた本だとすると、この本は、いじめられっ子(ダメ人間)が書いた本と言って良いのでしょうか、寝ても覚めてもアーセナルのことしか頭にない変人(著者自身)の自叙伝です。ダメ人間っぽさが日本語の翻訳文に表れていていいよね。訳者がエエカッコしいの東本貢司じゃなくて良かったよ(笑)。アーセナルやイングランドのフットボールに関する記述と、著者の人生についての記述の両輪で物語が進んで行きます。従って、イングランドのフットボールについて全く予備知識のない人でも、それ以外の著者の人生についての片輪部分で、ある程度は楽しめるようになっています。まあ、英国では話の取っ掛かりはフットボールですから、この本に書いてある体験を共有・共感できる人が沢山いるということで、100万部を超す大ベストセラーになってもおかしくないでしょうね。本国で映画化されているらしいのですが、その日本版DVDは、まだ発売されていないようです。
フーリガン本と決定的に違う点は、フーリガンは家庭を持ったり、仕事が忙しくなったりする、ある一定の年齢になるとフーリガンを辞めてしまうのだけれども、この本の主人公は、幾つになっても、仕事を選ぶ際にも、自分の妻を選ぶ際にも、性懲りもなくアーセナルを基準に行動しているというところでしょうか(それでも生きていけるんだから英国は面白い)。ほんの呪文程度に、クラッシュ、バズコックス、ラモーンズやらの名前が出てきますが、飽くまでもメインはアーセナルとイングランドのフットボールです。
日本人で、この本を読んだら面白かったという奴がいたら、それはウソになるよな。よく全米興行収入第一位とか言って、馬鹿ハリウッド映画がウソの宣伝文句をテレビCMで垂れ流しているけど、それに出てくる馬鹿日本人カップルの上映後インタビューみたいだよね(失笑)。精神奴隷となって、誰かに無理やり言わされていないかい? アーセナルやイングランドのフットボールについて、この本で詳細に書かれている内容が全部わかる人がいたら、それは英国人です。普通の日本人にとっては記号でしかないと思う。日本の読者は、それ以外の部分を面白いと言っているだけだから、本当の面白さの半分も味わっていないんじゃないのかな。しかも、個人主義の国でないと、こんな小説は書けない。個人主義とは何たるかを知らない普通の日本人が、自分もそうありたいと願って、無い物ねだりをしているのであろうか。それとも、ただの盲目的英国礼賛なのか。
因みに、原題の"Fever Pitch"は「熱病のごとき勢いで」という意味ではありません。"Pitch"とは試合を行うグラウンドのことで、タッチラインとゴールラインに囲まれた部分を言います。サッカー観戦者の常識ですよ(失笑)。
『リヴァプールより悪意をこめて Fish & Chips & Football』
トニー・クロスビー (著)
(双葉社)
フジテレビで深夜に放送されているサッカー番組で、顔のむさ苦しいイタリア人と一緒にギャアギャア騒いでいる、小太りの変なガイジンのオッサンと言えば分かるでしょうか、リヴァプール出身の在日英国人が書いた本です。自伝というかサッカーに関するエッセイ集というか、それほど畏まったものではなく、軽いノリで一冊の本にした感じです。著者の人柄を例えていうならば、「英国版ビートたけし」です。「TONYの歌ったSUPPORTER'S SONGS」と題して、"The Referee's a Wanker(レフリーは、オナニーしすぎ)"だとかの、下品な内容のFootball Chantが、それぞれの章と章の間で挿入されています(笑)。
井形慶子らのインチキ英国本では決して知ることの出来ない、60年代当時の英国庶民の貧しい暮らし振りが、当事者である著者によって語られています。身体の一部が事故で損傷・損失したりだとかの、英国人特有の滅茶苦茶えげつない自虐的なユーモアは、全部本当の話なのかどうか分かりませんが(笑)、大爆笑の連続で、ミスター・ビーンのコントを見ているようでした。
因みに、「最高じゃんスノボー(My First Snow-boarding)」の、
・・・目的地は尾瀬戸倉。地図を見たら、何となく行きやすそうだったんだ。ところが、スイス人が持っていたのは外国人用の地図だった。アルファベットで表記してあるわけだけど物凄く大まか。「だいたいその辺に行ければいいだろう、外人」みたいなシロモノだ。地図上では、一面緑しかないような所にも、小さな道がたくさんある。結局、朝の4時に東京を出て、現地まではたっぷりと4時間はかかった。・・・
この個所、個人的に大爆笑でした。「だいたいその辺に行ければいいだろう、外人」というのが、私、痛いように分かるんですよ(笑)。だって、「地球の歩き方」を携帯してイギリス中を旅して周ったことがあるけど、地図が大雑把で情報が古すぎて、どれだけ苦労したか。まさに、「だいたいその辺に行ければいいだろう、日本人」でしたよ(笑)。あの本、実際に現地へ行って取材したことの無い大馬鹿野郎が、机上の空論で作っているんだよね。あんなの「地球の歩き方」ならぬ「地球の迷い方」ですよ。それはさておき(林信吾調)。
「英国人は風呂に興味がない(2up 2down)」というのは、よく聞く事例です。英国というのは日本と違って高温多湿ではなく、あまり汗をかかないから毎日風呂に入る必要が無いというのが定説らしいですが(確か、林信吾ならぬ林望の本でも、風呂場の蛇口にシャワー・ホースを取り付ける苦労話が載っていたような)、実際、英国人の友人に聞いてみたら、人それぞれだという無難な答えが返ってきました。
「活気がなくなったリヴァープール(Sweet Liverpool home)」。確かに、リヴァプールというのは奴隷貿易の中継地点で(海洋博物館の「人目につかない場所(確か地下だったと思う)」で、大英帝国の負の遺産である奴隷貿易の展示コーナーがあったのを覚えています)、船舶が交通手段だった時代は活気に満ちていたんだよね。アイルランドの向かい側に位置するし、実際、リヴァプールを経由してアメリカ大陸へ渡っていったアイルランド系移民というのは多いんじゃないかな。私自身、現地へ行ってみて感じたことは、古くて大きな建物がいくつも目に付いたということです。それらが古き良き時代のリヴァプールの遺産で、中身が機能していないとしたら、この本の著者が言うように、リヴァプールは寂しい街なんだろうな。言われてみれば、同じ港湾都市でも、活気に溢れたサウサンプトンとでは大違いだったよね。
「これじゃ何だか日本みたいじゃないか(Sun Goran Eriksson)」。次の個所は、想像しただけで吹き出してしまいました。
・・・そんな時に英国大衆紙の「ザ・サン(The Sun)」が、とんでもないスクープ?を飛ばした。1面から「次のイングランド代表の監督は、これで決まり?」と大きな見出し。その下には写真が載っていて、ロバがイングランド代表の帽子をかぶっている。「ザ・サン」は当時巷間噂されていた代表候補監督たちの仲間にロバを入れて投票を行った結果、ロバが1位になり、それを1面で取り上げたのだった。英国ではロバは、まったく動かず働かず、融通の利かない頑固で馬鹿な動物といわれてきたんだ。・・・
東スポでも無理でしょう、こんなジョーク。大体、生真面目な日本人にとって、こんな遊び心は許されないし、批判対象を動物に例えて扱き下ろすという皮肉や機知に富んだ発想自体持っていないでしょうね。因みに、「これじゃ何だか日本みたいじゃないか」というのは、「自分の国に代表チームを率いる能力のある監督がいないから外国人に頼む」という、情けない英国サッカーの状態を意味しています(苦笑)。
・・・いまのところオレは、TV出演の依頼がきても、大好きなサッカーの番組以外は断っている。"変なガイジン"の役を演じさせられるのはまっぴらだからな。もちろんオレは天然の"変なガイジン"だけど、それを演じたりはしたくない。知らなければ教えるけど、TVに出ているガイジンたちは100パーセント演技している。でも、オレはごめんだ。これはオレのポリシーなんだけど、本職のスタイリストやファッション・デザイナーとしての仕事だったら、サッカー以外も大歓迎だ。・・・
なるほど、さんまのTV番組に出ている、あの日本語の滅茶苦茶な黒人たちも、台本があって演技をしているということですね(苦笑)。しかし、この本の所々に挿入されている絵は、著者が書いたものらしいのだが、アート・スクールを出てファッション関係の仕事をしている割には絵が下手だな(苦笑)。
リヴァプールへ行く予定のある人は、この本を持って現地のパブへ出かけましょう。きっと、あなたは人気者になれると思います(笑)。それとも、この本、もうネタとして日本人によって、現地で使い古されているのかな(苦笑)。
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