新春対談 2005 - Part 1
この国には、素晴らしい才能に恵まれたバンドが数多くいる。ただ残念なのは、彼らの多くが半分の力でしか走っていないことである
Toshi:でも、The Griffinみたいなバンドの解散発表は、ある意味、去年の事件として挙げてもいいすよね。「ドキュソOi一座」なんかを横に置いて、しっかりイングランドの若者ネタをディープに追いかけたりして。歌詞にも直球なことを書いていたみたいだし。こういうコアなバンドに、ビジネスを見込める程度の数のファンがいなかったってことは、日本のシーンとやらも、かなりヤバくなってきたなと。売れるか売れないかはともかく、一つの兆候として捉えておくべきだなとは思いましたね。
追山:んー、俺はこのバンド、実は、あんま評価してないんだ。たしかに、日本のシーンの衰退は事実で、こういう深めのバンドがやっていけない地盤はあるんだろうけど、中身的に過激ってわけでもないじゃん? 全般に数年前のBack Drop Bombだとかのミクスチュア・ロックに、もうちょいマニアックな切り口の英国ネタを加えた感じでさ。音はしっかりメジャー寄りというか、AC/DCの三倍薄めみたいなハードロック調で、一般音楽ファン向けの体裁にしてるしさ。手法も前の前のアルバムが古風なラップで、今度は、ちょっと進化してラップ・コアでしょ。すごいまともってか、フツーじゃん。英国の若者ネタを取り入れた歌詞が売りです。めちゃくちゃ面白いです、つーなら英国で販売してみろっての(笑)。
Toshi:んなモン、どうやっても売れませんよ(笑)。毎回、二番煎じの音ばっかしのThe Griffinがいいとは言いませんけど、やっぱ日本のバンドのCDを買うイギリス人って滅茶苦茶少ないんだもん。
追山:でも過剰なイズムって、それぐらいの一点突破主義で無茶苦茶してこないと、買う側の共感を得られないとおもうぜ。そういう意味で案外スケベなバンドだよ、これ(笑)。しっかりメジャー寄りにシフトしてんだからさ。それに、なによりバンド側の「軸」が見えないのが、ヤだな。音楽性が、一般向けも狙うスケベな戦略でも、その奥にきちんとした狙いが一本背骨みたいにあれば、逆にマイナー気取る必要なんかないんだ。「俺たちの視点が王道だ」ぐらいふんぞり返って、一気にSA、Cobra、Laughin' Noseを吹き飛ばしてくれてもよかったじゃん? ちがう?
Toshi:まあそりゃ正論ですけどね。先生は、業界の外野から物言ってリスクは背負ってないもんなあ(笑)。
追山:背負いたくないから、もう一ファンに戻るつってるのに、あんたが担ぎだすんじゃないか(笑)。まあ、それはともかく。君の評価してるのは音じゃなくて、十分に練られた英語の歌詞のことを言ってるんだろ? あれだけなら俺も大好きだよ。"The Age of Innocence"、"Poseur Blunder"とか最高に面白いし、あの人は英語のセンスもいいじゃん。社会問題を題材にして歌っていたのなんか、すごくいい。でも所詮、一匹狼のバンドじゃん。せっかく仲良しの実弟とか、Bill Leckieとか、Sandiestの山下君っていう尖った人材を揃えてるんだから、バンドのカラー枠もトーン揃えて、もっと挑発的なことやればいいのにって思ったね。
Toshi:でもそれだけでバンド売るのはやっぱ冒険的過ぎやしませんか。
追山:だってフツーをやってもレコードは売れてないわけじゃん? 昔、最初にThe Discocksとかが盛り上がった頃は、ちゃんとレコードが売れたんだよ。それが売れてない状況をどう思う?
Toshi:うーん、まあネットでタダでダウンロード出来ちゃうから、レコードが売れないんだとか「向こうの業界」は言ってますけど、それって明らかな責任転嫁ですね。面白い物を作る作業サボっといて何を抜かしやがると。大昔の貸しレコード屋の時代とかでも、ダビングなんかいっくらでもあったわけですよ、それで当時レコードの売上が落ちたなんて話はなかったスからね。ダビングはダビング、レコードはレコードだったんですよ。問題はダウンロードで十分と思われてる、あんた達の薄いコンテンツ作りにあるんでしょ、と俺は思いますね。
追山:だから、このサイトで、「俺達ファンは、与えられた餌を黙々と食べるだけの家畜ではない」とかToshi君は言ってたわけだ(笑)。でも、実際バンドがファンの支持を失ってるのは事実で、今の日本のパンクのオピニオン・リーダーって、実は、どこにも居ないんだよ。
Toshi:それ、やばいすよね。媒体が他に無くて、『DOLL』の出すものをファンが鵜呑みにしてる状況ってことですから。「解釈」がなくて「消費」だけがある。
追山:一方でToshi君のHPも凄く充実してるじゃない? すごい密度の濃いレビュー、批判・批評を流してるし、今度は英語ページを作ってコンテンツを出す事に熱心だ。あれはある意味、「『DOLL』なんか見なくていいですよ」ってイズムを体現してるんだよね。そういう挑戦を受けてるのに、肝心の『DOLL』はイエスマン体質で喧嘩を受けて立たない。
Toshi:受けて立って総崩れするのもアレだからなんでしょうけど(笑)。逆に日本のパンクが、そういう切り札を使いたくても使えないのはダメですね。それと関係あるのかわかんないけど、『DOLL』の洗脳が過ぎるせいで、バンド関係者が『DOLL』に、「おんぶに抱っこ」状態になるのが通常になってきましたしね。
追山:当のバンド関係者が、未だに「今月号の『DOLL』見た?」とか言ってるモンな。ま、反『DOLL』のキミのとこは向かい風だろ(笑)。でも、コネや情実だけに頼ってた媒体はホント胸突き八丁だと思うんだよ。日本のパンクがまがりなりにビジネスになってきて、やっぱ権益を守る側も必死な訳さ。だからネットも含めて、もっとファンを煽れる、ポリシーを持った媒体でないと生き残れない時代になってきたんじゃないかな。
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